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権利・義務 と 私的自治の原則

私たちの私的な生活関係を規律する「民法」というルールは、すべての関係を「権利」とその裏返しとしての「義務」という法的な概念を用いて表現しています。

「権利」とは何かはとても難しい問題ですが、ここでは、他人に対して一定の作為(○○すること)または不作為(○○しないこと)を求めることができることであり、仮に一定の作為・不作為がなされないときには訴訟によってそれを貫徹できる資格であるとしておきます。「義務」は、「権利」の裏返しですので、他人に対して一定の作為・不作為をとるように拘束する(させる)ことを意味します。

たとえば、何かを売買しようとするとき、買主はその売買の目的物を取得することができますが、その代金を支払う義務を負います。他方、売主は代金を受け取る権利を得ますが、目的物を引渡す義務を負います。

私たちにとってとても身近な行為である売買のように、個々人は自由に社会関係を形成できるという意味を法的な観点である権利義務から表現すれば、自由な個人が拘束されて義務を負うことになるのは、自らの意思でそれを望んだときだけであるということになります。これが民法の大原則である「私的自治の原則」です。このような私たちの関係は、「契約」という法律関係を通して形成されるため、「契約自由の原則」と共通性をもちます。そして、自己の自由な選択・決定の結果、自身に損害や損失が生じた場合には自らが責任をもってこれを負担しなければなりません(自己責任の原則)。また、故意・過失によって他人に損害を与えた場合には賠償する義務を負うことになります(過失責任の原則)。

もっとも、現代社会においては、個人間で情報や知識、能力などの点から必ずしも対等関係にあるとはいえないことも多く、国家が契約の内容に干渉したり、立法によって自由な自己決定が認められないなどの修正がなされることも多くなってきています。

私たちが社会という共同体の構成員である以上、あらゆることが自由なのではなく、自由には責任が伴いますし、権利には義務が伴うということになります。また、権利を有するからといって、何がなんでもそれを自由かつ無制限に行使できるということでもありません。

ということで、次回は「権利の濫用はこれを許さず」です。

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