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法とは何か

「法学者は今なお法の概念を求めている」
イマヌエル・カント(1724-1804)の言葉です。

「法とは何か」という壮大すぎる問いに対して、「法とは○○である」とその本質的な特徴を挙げてこれを積極的に定義することは極めて困難であることを示しています。もう少し正確に言えば、法とは何かについて、その答えは法学者の数だけ存在し、完全な意見の一致をみることなんて事実上不可能だということなのだと思います。

ただ、「法とは何か」に関連する争点(たとえば、法と事実・規範との関係、法と道徳との関係、法と強制との関係、法と正義との関係など)における法学者らの捉え方にはある程度の共通性や類似性が認められます。

そのため、「法とは何か」と問われたときに、まずは、法の基本的な特質を確認してその全体像や大枠を捉えようとするのが一般的です。ただ、この点についても真面目に考えはじめると迷路に入り込んでしまいますので、とりあえず、以下の点だけ確認して次に進もうと思います。

★規範としての法 
法は、規範(社会規範)の1つです。
規範とは、物差し、すなわち、是非善悪判断・価値判断の基準です。
社会規範とは、社会生活を営む上で守らなければならないとされている規準であり、その社会の構成員の行動・要求・期待ないし非難の理由となる型です。

規範は「~すべし」という当為の形をとり、「~である」という存在(事実)の形とは区別されます。法規範は、道徳規範などとそうした性格を共有する社会規範です。

point  法規範(法命題)は、原則として当為命題です。
ex. 「人を殺した者」に対しては「死刑または無期若しくは5年以上の懲役に処する」べき(刑法199条)

★強制としての法
法規範とそれ以外の規範(道徳規範など)の区別する指標は、物理的な強制力だといわれます。すなわち、法が要求する「~すべし」(命令規範)、「~すべからず」(禁止規範)という義務に違反した場合には、物理的な強制力を伴ったサンクション(制裁)が科せられる、しかもその制裁は法によって定められているという特徴があります。

道徳に違反することがあった場合、周囲の人から非難されたり、軽蔑されるという意味での制裁は受けるかもしれませんが、法的な制裁とは性質が異なるのです。

もっとも、「法は道徳の最小限」とも言われるように、殺人罪や窃盗罪などのように法的義務と道徳的義務と合致することが多いのもまた事実です。

なお、「法の外面性、道徳の内面性」とも言われます。これは法が人の行為という外部的発現を評価し規律するものであるのに対し、道徳は人の内部的心情を評価し規律するという意味です。

大学生の頃は、法律の条文を具体的に解釈する「実定法学」と呼ばれる分野には本当に馴染めず、「基礎法学」のなかの「法哲学(法理学)」と呼ばれる分野に面白みを感じていました。今回のようなテーマだと、なんとなく自分が考えている、学問しているなあと感じることができる自己満足からかもしれませんね(笑)

✧この記事を作成するにあたり参考にした文献・おススメしたい文献✧
平野仁彦=亀本洋=服部高宏『法哲学』(有斐閣,2002)
南野森編『ブリッジブック法学入門〔第2版〕』(信山社,2013)

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